千葉の撮り鉄。古き良きものを求めて。

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ESSAY No.1「"鉄道"に求められるもの」

Ⅰ. 鉄道の日本流入

 明治になり、開国と共に「鉄道」が日本に伝わった。日本初の鉄道は新橋~横浜(桜木町)間に開業した。明治維新以降物流が活発化していた日本にとって、陸上の輸送力増強はなくてはならないものであった。この開業から30年後には7,000kmに達した鉄道網は日本の近代化の一翼を担ったのだ。
 以降列強に並ぶ国力を求めた政府の下で輸送力の増強を成すべく、技術開発が進んだ。日本に限った事ではないが、発展途上国と言われる国々では輸送力の増強が最優先される。道路よりも鉄道が先に発達した日本では、経済成長=輸送力増強=鉄道の技術開発 といったように、輸送力の増強が望まれたからこその鉄道技術の発達だったのだ。
 戦後、GHQ指導により幹線の電化と無煙化(蒸気→ディーゼル)が進行し、特に戦時中には貨物輸送の傍らだった旅客輸送の分野での進展は著しかった。そして1955年以降、日本は高度経済成長期に突入し、さらなる輸送力増強が求められる。大幹線では三線化や、全国的に高性能電車が投入され、現代の鉄道の体系の基礎が出来上がった。電車特急「こだま」は東京~大阪を6時間半で結び、スピードと快適性から人気を博した。
 また、経済の発展につれて大都市で働く人が増え続け、新たな住環境が求められるようになると大都市近郊には「ニュータウン」が作られ始める。森林と畑しかなかった台地上に新規に鉄道を通し、鉄道駅を中心に街が形成されるという世界的にも珍しい体系である。日本経済を支える都市圏の形成には鉄道がなくてはならない物であったのだ。
 19世紀~20世紀前半の「鉄道」を振り返ってみると、「質より量」であったことは間違いないだろう。無論、経済発展には量優先が不可欠である。そして、道路網が発達していなかったため陸上輸送の王様は鉄道であったのだ。

Ⅱ. 鉄道の衰退と国鉄解体

 1964年の東京オリンピック以降、日本でもモータリゼーションが進み始めた。高速道路の拡張や鋪装道路の増加等の道路整備、一般大衆にも購入可能な価格の大衆車の出現、オイルショック後の石油低価格化などによって、自動車が利用しやすい環境になったことが要因に挙げられる。また、国鉄での事故の続発、運賃の値上げ、ストライキの乱発による運行の不安定化などが鉄道の利用者離れを招いた。

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データ出典:自動車検査登録情報協会「わが国の自動車保有動向」 普通車

 今までの「鉄道だけが陸上輸送を担う」のではない状況がおこるようになった以上、競争しなければ営業できないようになり、国鉄では何か新たな対策をする必要性が出てきたのだ。そして、絞った地域向けのデザインや今までの列車ジャンルにない車両デザインを登場させるに至り、標準化が崩れていった。事例を挙げると、一つ目は関東~関西にかけての東海道本線の普通列車や急行列車に使用されていた153系の置き換えである。関西地区用には117系が1979年に、関東地区には185系が1981年に登場した。特に185系は特急形車両でありながら通勤通学輸送にも対応させ、普通列車にも充当するという、それまでの国鉄にはなかった新しい試みのもとに設計・製造された。元々はデッキがない車両として計画されたが、特急に充当した際の居住性に問題があるとして後からデッキありの計画にされた経緯がある。2つ目に、乗っていただくこと、即ち集客を大きく打ち出した、お座敷列車やサロンカーなどのジョイフルトレインがある。今までなかったプロモーションの部分を展開したのだ。

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▲新幹線の開通により余剰となった485系は改造されてジョイフルトレインとなった。

 そして1987年、モータリゼーションの進行に対抗しきることができず、財政悪化のため全国一律のサービスを担当していた国鉄が解体され、地域主体のJRに転換し地域密着型のサービスが展開されるようになった。前述のように競争が必要なった以上、売り手の都合ばかり考えるわけにはいかず、商品性を検討せざるを得なくなった。機能だけでは成り立たなくなったのだ。JR化以降、車両デザインは同じ用途であっても地域に合わせた最適なものとなっていて、それぞれコンセプトにも違いがある。

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▲JR九州は奇抜なデザインや色調を列車に採用、一部車両には革張りシートも存在する。

Ⅲ. 新しい"鉄道"のあり方

 これからの鉄道について考える上で大切なことは、「何が求められているのか」ということだ。社会情勢に応じてそれ自体の意味も変化し、求められているものむ変わってくる。国鉄時代初~中期の「輸送量と快適性」のみを追求した鉄道のあり方は当時の社会情勢に適していたのだ。
私の考える現代の鉄道に求められている価値は ①鉄道に乗ること自体の価値 ②都市交通の機能向上の源としての価値 である。

①鉄道に乗ること自体の価値
 鉄道に乗ること自体の価値というのは、鉄道を単に移動手段としてではなく乗ること自体を楽しむものとして捉える、ということだ。簡単に言うならば「乗って楽しい」列車ということだ。昨今流行りのクルーズトレインや車内で食事が楽しめるレストラン列車などは利用者から好評を博している。
JR九州では日本鉄道史上最高級のサービスを行うクルーズトレイン"ななつ星 in 九州"を運行開始し、報道等でも大きく取り上げられ全国から注目された。また、その他JRでは"TOHOKU EMOTION"(東)、"花嫁のれん"(西)、"伊予灘ものがたり"(四)、"或る列車"(九)などを始めとして、車内での飲食を前面に押し出した観光列車を多数運行している。また、地方私鉄では"レストランキハ"(いすみ鉄道)、"ろくもん"(しなの鉄道)、"おれんじ食堂"(肥薩おれんじ鉄道)などこちらも多くの列車が運行されている。
どの列車にも共通するのが、今までの鉄道とは全く異なる内装と外観、サービスを提供することで今まで鉄道を利用していなかった客を獲得している点である。また、その地方のイメージや名所に因んだ内容を列車に採用し、魅力を報道等に大きく取り上げられることで鉄道とその地域のブランド力を発信している。鉄道の利用者増にも繋がる上に、地域の魅力を全国に発信できるという大きな利点が存在する。これが鉄道の新たな"価値"の一つだ。

②都市交通の機能向上の源としての価値
 少子高齢化による中心市街地の衰退や環境問題、公共交通網の不全による生活行動圏の狭小化など、都市がかかえるさまざまな問題を解決する手段として鉄道を利用するべきだ。
例として近年整備が進む"LRT(Light rail transit 輸送力が軽量級の鉄道)"を示す。LRTとは低床式車両、低床式ホームを整備して乗降の容易性等を追求した次世代の軌道系交通システムであり、いわば一般的な路面電車の進化版である。一番の特徴は路面との高さが小さいためノンステップで乗車できることだ。

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▲富山駅を中心とした軌道網はコンパクトシティを目指す都市造りの先駆け。

 JR等の長距離路線が都市間輸送を担い、駅から各方面に中距離路線バスが発着する現状を、長距離路線駅から先のLRTが小規模地域間の輸送を担い、そこから先の短距離輸送をバス路線等が担うようにすることにはさまざまな利点がある。一つ目は、乗降の容易化により地域内での人の流れが活発になることだ。路上を走り、固定施設を持つLRTは街の空間を形付ける要素であり、魅力のある街づくりをする上で重要になる。そして魅力あり、楽に行ける場所には人が集まり、経済の活性化に繋がる。また、上下方向の移動が無いためバリアフリーの達成ができ、高齢者にも優しい街になる。魅力ある街づくりに向けて都市環境との調和を第一に据え、都市全体トータルのデザインを重視するべきだ。2つ目に、適度な運転間隔と運賃を保っている路線では、マイカーから公共交通機関に乗り換える客の利用が増加することで、交通渋滞の解消や地球温暖化対策に繋がる。鉄道と自家用自動車の輸送量あたりのCO2排出量(g/人キロ)の差は明らかであり、環境負担を軽減できる。
 このように、LRT等の整備に多くの利点があることは明確だが、現在の日本では整備しにくい環境なのが実情だ。鉄道を整備するには勿論、法律に従わなければならないのだが、鉄道法と軌道法の2つの法律が存在し、どちらの法律を適用するのかが非常に複雑なのだ。新たな交通システムに関する分野を集約した新たな法整備が不可欠だ。

Ⅳ. 総括

 昔と違いモノにあふれている現代では、新しい価値をもたらすことができるものが良いモノだと受け止められることが多い。単に奇抜なスタイリングなだけでなく新しい価値を創造し、なおかつプロモーション性のあるものが求められている。「何が求められているのか」を考えた上で鉄道の新しいあり方を見出すべきである。


参考文献
 国土交通省 www.mlit.go.jp
 自動車検査登録情報協会 www.airia.or.jp
 東洋経済オンライン toyokeizai.net
 公益社団法人 日本交通計画協会 www.jtpa.or.jp
 富山市 ホームページ www.city.toyama.toyama.jp
 鉄道ジャーナルNo.577 鉄道ジャーナル社

写真は全て筆者撮影
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2017-02-25 : ESSAY : コメント : 0 :
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被写体は国鉄時代〜JR第一世代中心。本拠地は千葉県中南部。

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